ウェブコンテンツの価値

こんにちは、それからデザインの佐野彰彦です。
私たちは、企業や事業のブランディングをウェブサイトを中心に実現するという新しい手法「ウェブブランディング」を日々研究し実践しています。ウェブサイトを受託制作する会社、という意味では一般的には「ウェブ制作会社」と同じグループに属しますが、私たちの提供するサービスはあくまでも「ブランディング」です。ウェブサイトをつくることが仕事ではなく、企業や事業をブランディングするために、ウェブサイトを有効活用していくというスタンスを追求しています。

この「ウェブを中心に企業や事業をブランディングする」という考え方は、非常に理にかなっていることを実感しているのですが(参照:ウェブブランディングとは〜ウェブとブランディングの関係性)、まだまだ世の中には浸透していません。実際、ウェブブランディングに特化して活動している会社は、私の知る限りでは他には存在しません。
このような背景から、私たちの提案する「ウェブブランディング」という考え方や取り組み方を、まずは多くの方に具体的に知っていただく必要があると考え、今年より、月1回「ウェブブランディング基礎講座」というセミナーを無料開催しています。ウェブサイトをつくることはあくまでも手法。その先の根幹の目的にアプローチするための大切なポイントを、実例を見ていただきながら解説しています。
今回のブログでは、ウェブブランディングの特徴のひとつ、「ウェブコンテンツの価値」について、ご紹介したいと思います。

まず、私たちがウェブブランディングと銘打って制作するウェブサイトは、ウェブサイトのコンテンツ、つまり「ウェブサイトに掲載する情報や内容」について、最も重視しています。語弊を恐れずに言えば、「ウェブサイトは読み物」と捉えており、読む価値、見る価値があるかどうかで、すべてが決まると考えています。この考え方を尺度に、既存の企業や事業のウェブサイトを見ると、そのほとんどが、根本的に間違っていると気付きます。

単なるウェブ版のカタログになっているサイト、ひたすらに広告的表現で買って欲しいとお願いしているだけのサイト、デザイン表現には凝っているものの情報として圧倒的に薄っぺらいサイト、内輪のコメントや押し付けがましいお客様の声など、「読んでいても面白くないサイト」が世の中にあふれています。私にご相談いただいたとき、まずは現状のサイトを見させていただきますが、大手企業、中小企業問わず、上記のようなウェブサイトがほとんどです。

 
 

ウェブマーケティングとウェブブランディング

なぜ多くのウェブサイトがつまらないのか、という理由には様々な要因があると思いますが、ひとつは、ウェブ業界の悪しき慣習にあると私は考えています。ウェブマーケティング系の制作会社やコンサルティング会社は、自社のサービスを企業に導入してもらうため、成果指標として「アクセス解析データ」を紋所に据えて、激しい競争を繰り返してきました。その結果、PV数(ページビュー数)至上主義という土壌が出来上がり、ウェブサイトの制作そのものも、「一過性のアクセスをより多く稼ぎ出し、クライアントを納得させる」という方向に流れてきました。
また、ウェブには「SEO」や「SEM」という独特のマーケティング手法が存在するため、ウェブサイトの読み手(人間である訪問ユーザー)よりも、検索アルゴリズムに合わせたコンテンツが量産されるという事態も起こっています。この記事ではテーマと外れますので詳しくは割愛しますが、検索エンジンの意向を欺く小手先技術に終始するウェブマーケティング手法を提案する業者も普通に存在します。
検索技術も日々進化を遂げており、最近では、ユーザーにとって価値のあるコンテンツであることを、かなりの精度でGoogleはアルゴリズムに組み込むことができるようになってきました。しかしこれまでのウェブ業界の経緯から、「目先のPV数や成果を追い求めてきた結果、一時的なマーケティング手法に溺れ、訪問者にとって価値のない(薄い)サイトが量産されてきた」という状態になっているのです。

私たちが追求している「ウェブブランディング」は、根本的に「ウェブマーケティング」とは異なります。まずは、以下の図をご覧ください。

ブランディングの3階層
─出展:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会より
 
 

上図は、一般社団法人ブランドマネージャー協会が発表しているブランディングの概念図です。この図から分かるように、ブランディングはマーケティングより上位の概念にあたるものです。経営戦略がまず土台にあり、その上にマーケティング戦略があり、さらに最上位概念にブランディングが存在します。SEOやSEMでアクセスを稼ぎだす手法はたしかに存在しますが、これらはマーケティング手法のひとつに過ぎません。そこを最上位概念においてはいけません。あくまでも、企業や事業の価値や魅力を知らしめること、つまりブランディングを実現するための手法としてのマーケティングでなくてはならないのです。

最も大切にしなければならないのは何か。そこに向き合うことなく、一過性の利益を追求してきたことのツケが、今、ウェブ業界、および企業のこれまでのウェブ活用に大きくのしかかっていると私は感じています。
一部のウェブマーケティング会社は、「SEOはテクニックが通用しづらくなってきた、次はコンテンツマーケティングだ」などというスタンスで、今もなお、企業の無知な担当者にアプローチをし続けているという、全くもって懲りない輩も存在します。本来のコンテンツマーケティングとは、「良質なコンテンツをつくることで、成果につなげるマーケティング手法」のことを指しますが、このようなスタンスの会社が提案するのは、単なるSEOキーワードの羅列やタグ埋め込みでは検索順位アップが難しくなってきたので、あたかも読み物のように仕立てあげた検索順位向上のためだけのコンテンツを量産する、という小手先のテクニックです。
このようなテクニックもまた、効果があったとしても一過性であることは明白でしょう。残念ながら、ウェブ業界はまだまだ成熟した状況ではなく、発展途上の隙間で、本質と外れた提案が横行していることもまた事実です。

私たちは、このような一過性の利益に埋没することのない、企業や事業の本質的な価値と魅力を伝えるウェブサイトの在り方を追求してきました。それが「ウェブブランディング」の存在価値です。

 
 

ユーザー視点で、ウェブコンテンツを考える

企業や事業の本質的な価値と魅力を伝えるウェブサイトとはどんなものか─。
これはある意味で、ウェブ制作に従事する人すべてが永遠に追求するテーマです。しかし、その中で、私たちは必要条件を発見しています。それは、「読み手にとって価値のあるコンテンツ」の必要性です。コンテンツに価値がなければ、そのウェブサイトはブランディング戦略においては存在しないも同然です。価値あるコンテンツをどのように発想し、企画していくかを、私たちは「ウェブブランディングの必要条件」と考え、大切なポイントとして十分な時間を割いています。

そして、そのコンテンツを企画する際に、重要なのが「ユーザー目線で考えること」です。コンテンツの企画は、企業側が知ってほしいことからはじめるのではなく、ウェブサイトの訪問者(つまり、ユーザー)にとって価値のあることから考えます。とても基本的なことではありますが、ここが非常に難しい部分です。私たちのウェブブランディングプロジェクトでは、コンテンツ企画をブランドオーナーとともに練り上げていきますが、自分たちの商品・サービスを客観的な視点で見るということは、思う以上に難しいことのようです。

たとえば、食品メーカーのウェブサイトがあるとします。食品メーカーのサイトでは、よく「この商品をつかったアイデア料理レシピ集」というコンテンツがあります。一見すると、その商品を購入したユーザーにとって、レシピ集というコンテンツは便利そうで、価値が高いように思えます。しかし、私はこう考えます。食材や調味料などを購入するユーザーは、「つくりたい料理がまずあって、その材料として購入する」ことが大半であり、「何に使うかはわからないけど、買ってから考える」というユーザーは稀ではないかということです。
だとすると、「この商品をつかったアイデア料理レシピ集」は、効果的なコンテンツかどうか疑問符がつきます。たとえば、その一歩先のユーザー心理を読み、「あまった材料を活かしてもう一品、おかずレシピ集」というコンテンツはどうでしょうか。消費期限のあるような食材であればなおさら、使い切ることは難しいものですので、「あまり材でつくれるレシピ」があったなら、ユーザー価値はより一層高くなります。そのようなコンテンツをウェブサイト上で展開することで、商品の価値や魅力の訴求につながるはずです。

このようなユーザー視点は、ブランドオーナーである企業側だけで考えるより、より生活者に近い立場の人がプロジェクトに加わると効果的です。その意味において、私たちは「素人であるがゆえの客観的視点」をコンテンツ企画に活かして提案しています。企業が伝えたいことと、ユーザーが知りたいことには、少なからず隔たりが存在し、そのギャップを埋めることこそが、ウェブブランディングの骨子になります。

 
 

ウェブコンテンツの5つの価値

コンテンツの価値は、常にユーザー側に存在します。「自分たちの価値はこれだ!」とどれだけ強く発信したとしても、それをどう受け止めるかはユーザー次第です。この事実にどれだけ真摯に向き合えるかが、ブランディングの成否を分けるともいえるでしょう。
ウェブブランディングでは、価値の高いコンテンツを企画する際、ユーザーがどのような要素に価値を感じるのかを、分類して考えます。ユーザーにとっての価値は、以下の5つに分類できます。

ウェブコンテンツの5つの価値

 
 

先ほどの「あまり材でつくれるレシピ」は、「創造扶助」に該当するでしょう。コンテンツの演出方法次第で、あるいは、「娯楽提供」につなげることもできます。すぐにそのレシピを実践はしないまでも、時折チェックしたくなるようなレシピ集なら、その商品のファンになり、リピーターとなる可能性が拡大します。
このようなユーザーにとって価値の高いコンテンツを、いかに練り上げることができるか、そして、ウェブの特性(文章、写真、動画、データベース)を使って効果的な演出ができるかで、そのウェブサイトが企業価値の高い資産となるか、ただウェブ上に存在する無意味なカタログになるかが決まるのです。

2016-08-15 | Posted in ブランディングのことComments Closed 

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