機能的価値、情緒的価値、自己表現価値

こんにちは、それからデザイン代表・ブランドデザイナーの佐野彰彦です。
商品・サービスのブランディングの依頼をお引き受けする際、私が必ず重要視することがあります。それは、その商品、そのサービスの企画開発の段階から参画させてもらうことです。理由は明確で、「既製品の上に服を着せるようなことをしても、ブランドはつくれない」からです。このことは、日々の打ち合わせや、セミナーなどでもよくお伝えしています。

消費者・顧客が商品・サービスの購入意思を決定することのメカニズムは、「消費者・顧客のニーズ」と「商品・サービスが提供する価値」が結びつくことです。よって、企業が考えるべきことのひとつは、消費者・顧客のニーズを知ること、もうひとつは、商品・サービスの価値を磨き上げることです。今回は、その後者、「商品・サービスの価値」について、触れてみたいと思います。

 
 

デビッド・アーカーによる、価値の3分類

「商品・サービスの価値」とは、消費者・顧客にとっての価値に他なりません。「ブランドの神様」とも呼ばれるアメリカの経営学者デビッド・アーカー氏は、価値には3つの種類があると述べています。それは「機能的価値」「情緒的価値」「自己表現価値」の3つです。

 

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機能的価値

商品・サービスの機能やスペックによってもたらされる利便性や利益
 

情緒的価値

商品・サービスを所有したり体験することで得られるポジティブな感情
 

自己表現価値

商品・サービスを所有したり体験することで得られる自己表現・自己実現

 

具体的な商品に置き換えて考えると分かりやすくなります。たとえば、時計という商品があります。時計の機能的価値とは何でしょうか?「時刻を正確に知らせること」です。しかし、正確な時刻を知ることができる時計であれば、ホームセンターで売っている1000円の時計も、ロレックスのような100万円以上するような時計も、大きな差はないはずです。しかし、ロレックスの時計は人気がある。この事実には明確なメカニズムが存在します。それが残りの2つ、「情緒的価値」と「自己表現価値」です。

ロレックスの「情緒的価値」は、たとえばプロダクトとしての美しさや、高級感や安心感などが該当します。「自己表現価値」は、一流のブランドを身につけることで感じられるステイタスや、なりたい自分像へ近づける充実感などが挙げられます。
あらゆる商品・サービスにおいて、「機能的価値」には差がなくなっています。多くの企業はすでに機能的に優れたものをつくっているのであり、そこで価値の違いを感じにくくなっています。住宅業界は、一生に一度のマイホーム建築という超高額商品を扱う業界ですが、住宅展示場を巡り巡って、違いが分からないまま途方に暮れる消費者・顧客が大量にいます。言い換えれば、工務店やハウスメーカーはそこを逆手に取って、「情緒的価値」「自己表現価値」を磨き上げることで、ライバルに差をつけられるのです。

 
 

情緒的価値、自己表現価値の構築には、専門家が必要

それでは、その「情緒的価値」「自己表現価値」の2つをどのように創造していけばよいのでしょうか。それには、専門家の存在が必要だと私は考えています。日本のあらゆる産業は、高度成長時代を筆頭に、機能の良さ、品質の良さを磨き上げてきました。しかし、それだけでは差がつかなくなっている時代であることは前述の通りです。世界的に見ても機能的価値には差がなくなっています。性能の良さを最大のウリにしてきた日本製品が、海外ブランドにシェアを奪われているニュースが耳に入りますが、まさにこのことを象徴していると思います。一方で、日本の多くの企業にはまだまだ、「良いものさえつくればきっと売れる」という神話があり、消費者・顧客視点での価値を追求していないケースが多々あります。商品・サービスを開発する企業が、まずこのことに向き合わなくてはなりません。

一方で、情緒的価値、自己表現価値の企画開発には、専門知識と経験が必要になります。その専門家こそが、ブランドデザイナーだと私は考えています。そしてそれらは、「商品・サービスが出来上がった後」ではなく、つくる前の段階からの綿密な計画が必要なのです。よい機能を開発するために専門知識や経験や技術が必要なのと同様に、情緒的価値、自己表現価値の構築にも、専門性・経験・技術が必要になります。
だからこそ、今、ブランドデザイナーが商品開発の現場に参画し、企業と一体となって進んでいくことが必要な時代になっているのです。

2016-10-08 | Posted in ブランディングのことComments Closed 

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