誤解されるマーケティング、消費されるデザイン

こんにちは、ブランドデザイナー/ウェブデザイナーの佐野彰彦です。

企業の経営者や担当者が、デザインに期待することは何か。そして、デザイナーが提供しようとする価値は何か。ここには少なからずのギャップが存在していることを、デザイナーとして私は実感しています。ではなぜ、そのギャップがなぜ起こるのでしょうか。その理由のひとつに、企業のセールス至上主義があると私は考えています。今回は「マーケティングとデザインの関係性」という視点からこの問題を考察してみようと思います。

 
 

売れればそれでいい、という思考の落とし穴

まず、デザイナーという職業は、基本的に受託モデルのビジネスになります。企業から依頼を受け、その要望に答えるべく、デザインを制作し納品することで成立している仕事になります。この商流は歴史的にも変わったことはなく、原則としてこれからも大きくは変わらないのではないかと思います。

その関係性ゆえ、デザインの現場で仕事をしていると、時折、企業の経営者や発注者から「どのくらいの費用をかければ、どのくらいの反響が見込めるか」というような質問をされることがあります。この質問は、デザイナーにとって非常に答えが難しいものです。それはデザイナーに自信がないからではなく、「デザインの役割」についての認識が、発注者とデザイナーの間で異なっているからだと、私は考えています。

上記のような質問をする人は、デザインを費用対効果で考えています。つまり、デザインにかかる費用を「コスト」として捉えています。コストである以上、回収の必要がありますので、それをどのくらいの期間でどのくらいバックできるのかを「数値」で計測することに注力していきます。デザインコストを販促費用の一部として考え、いわゆるCPAやROIというような指標で効率化していくということを重視します。一般的に、このような論理思考をマーケティングと捉えている人は多いと思います。デザインをコストで測ることで起こるのは、「売れるのであればデザイン(の内容)はかまわない」という現場判断です。AとBをテストしてより売れる方を採用しよう、派手にしたほうが目立ってクリックされるはず、という論調に現場は飲み込まれデザインは消費されていきます。この思考には明確な落とし穴がひとつあります。それは、「視点が非常に短期的である」ということです。

 
 

マーケティングの意味を誤解している企業

前述の通り、マーケティングを費用対効果の追求と捉えている企業は非常に多いと思います。しかしここで、マーケティングとは何か、について偉人の言葉を引用してみたいと思います。

まずは、ピーター・ドラッカーの言葉。

マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。マーケティングの目的は、製品やサービスが自然に売れるようにすることだ※1

※1参考文献:『マネジメント』ダイヤモンド社

 
 

次に、マーケティングの神様とも呼ばれる、フィリップ・コトラーの言葉。

マーケティングとは経営そのもので、消費者に自社を愛してもらうことが最終的なゴールだ。※2

いまだにセールスとマーケティングを混同している経営者がいるのには驚かされます。マーケティングとは、製品やサービスに意味を与える仕事です。※3

※2、3参考文献:リーダーたちの名言集

彼らは、マーケティングを「自然に売れるようにすること」「自社を愛してもらうこと」といいます。つまり、いつまでにいくら売り上げるかという短期的な視点ではなく、自然に売れるようにする=仕組みづくり、自社を愛してもらう=ポジティブイメージの獲得、というような長期的な視点を指しています。さらに、フィリップ・コトラーは、「セールスとマーケティングを混同している」とも指摘しています。

 
 

長期的視点で活用すると、デザインは「資産」になる

つまり、彼らの言葉と照らし合わせると、多くの企業が考える費用対効果を主体とした考え方は、マーケティングではなく、セールスの範疇だと考えられるかもしれません。セールスは日本語にすれば「販売」です。一生懸命「販売」するために、目先の数字を拾うためのデザインをつくり上げることと、自然に売れる仕組みづくり、自社を愛してもらうためのイメージづくりは、基本的に真逆の関係です。デザインの本来あるべき姿とは、企業や商品の価値を最大化し、永続的に選ばれる仕組みをつくるためのものであり、企業の「コスト」ではなく「資産」になるものだと、私は考えています。

2017-04-24 | Posted in ブランディングのことComments Closed 

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