事業構想とデザイン

こんにちは、ブランドデザイナー/ウェブデザイナーの佐野彰彦です。

安定していると考えられていた大手企業でも、既存の事業では立ち行かなくなり、苦しんでいるニュースが聞こえてきます。シャープや東芝をはじめ、かつては日本経済をリードしてきた企業も厳しい状況に陥っているケースが少なくありません。一方で、富士フイルムのように既存商品のニーズが衰退しても、また次の新しい商品をヒットさせる力を持っている会社もあります。
その違いは何かといえば、シンプルに「事業構想力」の差だと言えます。日本は1980年代に大きな経済成長を経験しているため、過去の成功にこだわり、変化することに抵抗を持つ組織が少なくありません。これは前述のような大手企業だけでなく、中小企業や零細企業にも当てはまると思います。時代はどんどんグローバル化され、変化のスピードが増しているのに、いつまでも過去の事業や商品に固執してしまうという人はとても多いのです。

私は、この変化に富んだ今の時代を、中小企業にまたとないチャンスが巡ってきた幸運の時と捉えています。なぜかというと、「変化しなくては生き残れないから」です。そして、その変化は、図体の大きな組織より、コンパクトに意思決定をすることができる小さな組織の方が有利だからです。しかし、力強く生き残り、さらに成長するために必要なことは、ただ決断を早くすればよいわけではなく、もうひとつ重要な能力である「事業構想力」が必要になります。
そんな時代の中、近年、事業構想段階からデザイナーが関わることで、新しいプロダクトを生む手法が注目されています。今回は事業構想とデザインの関わりについて触れてみたいと思います。

 
 

「使われ方」をデザインする

これまでのデザインは、製品が完成した後でそれを売り物にするために「きれいにお化粧する」ことが大きな役割でした。この考え方を大きく覆したのがAppleでしょう。たとえばiPhoneにはボタンや取扱説明書がついていません。「機能がまずあってそれを使わせる」のではなく、「どう使うかも含めてユーザーに自由を与える」という発想そのものが製品となっています。製品の構想段階から「デザイン的発想」が取り入れられたことが成功の原動力となっているわけです。
今、住宅業界では、DIYが流行しています。住宅メーカーが決めたモデルプランより、自分で自由に楽しく部屋をつくりたいという人が増えています。完成品の販売ではなく、その製品をどう使ってもらうかをデザインすることが、成功する事業構想の考え方になるでしょう。

 
 

「既存の強み」を他に活かす

新しい事業構想とはいえ、これまでと全く関係のないことを当てずっぽうに考えては、成功する確率は非常に低くなります。たとえば冒頭でお話した富士フィルムの例は一見、フィルム事業からまったく異なる化粧品や医療の分野で成功しているように見えます。しかし、その背景には、フィルム事業で培ってきた技術が応用されており、他社にはない優位性となっているそうです。「既存の強みや特長をどう活かし、新たな事業につなげていくか」という発想が重要になります。

そして、その考え方には「客観的視点」が必要になります。その会社の強みを生活者視点からも捉え直し、再構築する作業に、デザイナーは役立ちます。なぜなら、デザイナーは、「よいところや優れた部分をしっかりと浮かび上がらせる考え方」を身につけているからです。それを単に完成品のお化粧担当ではなく、事業構想段階からプロジェクトに加えることで、社内メンバーだけでは思いつかなかった切り口が発見される確率を高めることにつながるのではないか、と私は考えています。

最近のそれからデザインは、完成品のPRのための制作ではなく、事業構想段階から関わらせていただくケースが増えてきています。既存の強みや特長を確認しながら、顧客ニーズを分析し、「デザイン的発想」を取り入れることで、これまでにはないビジネスモデルを構築していくようなプロジェクトです。それは、ブランディングを真剣に考えるほど、今のビジネスを単に紹介するウェブサイトを作ってもダメなことに気付き、本質的な取り組みに転じていくためです。そして、これからのデザイナーにはそのような事業構想力も求められる時代が来ているのだと実感しています。

2017-03-16 | Posted in デザインのことComments Closed 

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