デザインの現場監督

こんにちは、ブランドデザイナー/ウェブデザイナーの佐野彰彦です。
前回は、「デザインは企業によってコストではなく、資産である」という話をさせていただきました。ではデザインが資産であるとするなら、企業は具体的にどのようにデザインを活用すればよいのか、という点について触れてみたいと思います。

 
 

チラシは、デザインか?

まずデザインの資産活用について触れる前に、そもそもデザインとは何かについて今一度定義しておきたいと思います。みなさんは、「デザイン」という言葉をどんなときに使いますか? ロゴマークのデザイン、ウェブサイトのデザイン、チラシのデザインというように、「何か+デザイン」というような語彙の組み合わせで使うことが多いと思います。それでは、「デザインにかかる費用は?」と聞いたら、脳裏にはどんなことが思い浮かぶでしょうか?多くの方は、ロゴやウェブサイトやチラシなど、デザインされた結果としての「モノ」を思い浮かべると思います。まず、ここに誤解があるのです。

デザイン=チラシ、という認識の場合、デザインは資産ではなくコストになります。なぜなら、それは「モノの購入代」という認識に他ならないからです。チラシをつくったけど反響がない、ウェブサイトをつくったけど問い合わせがない、という見方ではデザインはその会社にとってコストのままです。デザインとは「戦略やコンセプトを具体化する仕組み」です。その仕組みをつくることは、チラシ1枚をつくることと、別の階層に位置しています。チラシやウェブサイトは、あくまでもデザインよりも下の階層であり、デザインの結果物としてアウトプットされるものです。その意味において、多くの企業はデザインをしていません。デザインではなく、チラシやウェブサイトに「コスト」をかけてしまっているのです。

 
 

一定の方向性を打ち出し、明確なルールをつくる

チラシ、ウェブ、パッケージ、動画、名刺、オフィス・店舗、インテリア、サイン看板など、企業がデザインを活用するシーンは様々です。これらを個別に独立した「モノ」と捉え、チラシやポスターはグラフィックデザイン会社へ、ウェブはウェブ制作会社へ、プロモーション動画は映像制作会社へ、オフィスや店舗は設計会社へ、という分離発注方式で制作を行うケースは多いと思います。しかし、このような方法では、企業がデザインを資産として活用することは難しいでしょう。

家を一棟建てることにたとえてみます。「設計図」や「現場監督」がないまま、窓はガラス屋、屋根は屋根屋、壁は左官屋、水まわりは水道屋、というように住まい手が依頼していったら、どんな家が経つでしょうか? 指揮者のいないオーケストラ、監督のいないスポーツチームはどうでしょう。全体のデザインの設計図を作らないままに、なんとなくの分離発注でチラシやウェブサイトや動画をつくることはこれに酷似しています。

つまり、その企業、その商品、そのサービスを明確に打ち出していくための「デザインの設計図」とそれを運用する「デザインの現場監督」が、デザインを資産として活用することの必要条件になります。

 
 

強い体質をつくる、それがデザインの役割

これからの時代、企業にとって、デザインはこれまで以上に重要性を増していくと思います。単純な広告では成果が出せない時代であることは今さらいうまでもありませんが、そこで企業が必要となるのは、豊富な資金でも、広告や宣伝力でもなく、本質的な商品・サービスの魅力と、それを伝える仕組みです。

その意味において、私たちデザイナーも求められる力が変容しています。企業経営と向き合い、商品・サービスの価値をより強く届けるためのディレクション能力です。Macの前にかじりつく職人ではなく、デザインの現場監督となることが、これからのデザイナーに期待されることでしょう。

そのことを双方が膝を突き合わせてタッグを組み、デザインを資産化していくことで、企業は強い体質を獲得できます。その強い体質は、言い換えれば、その企業・商品の「ブランド力」ということになります。

2017-05-01 | Posted in デザインのこと, ブランディングのことComments Closed 

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