モノに値段をつけるという束縛

ビジネスの正体は価値交換だ、と何度かこのブログにも書いている。価値の交換である以上、提供する何かに価値があって、それとお金を交換するということになるのだが、問題はその「提供する何か」だ。そこの設定を間違えてしまうと、その後どんな工夫や努力を重ねようがなかなか上手くいかなくなる、というのが私自身の体験から来る考え方だ。逆にその設定が上手く行けば、半分くらいはもう成功していると言える。

誰かが喜んでお金と交換してくれるような価値。提供する何かにそれをどう宿らせるか、が私の考えるブランド戦略で、コピーやデザインやウェブサイトはその設定を明確に伝えるもっとも重要な道具だ。

この設定の最適解を見つけることが、近年急速に難しくなってきているというのが、今の世の中ではないかと考えている。ポイントは、言われて久しい「モノからコトへ」というアレである。モノに溢れまくっている現社会では、モノを買いたいという気持ちが薄れていることはもうここ15年くらいずっと言われている(ような気がする)。だからどんな企業でも新規事業や新商品を開発するときは、多かれ少なかれこの視点で議論をするのではないかと思う。

では、どのくらいの企業がその「モノからコトへ」にビジネスモデルをシフトチェンジできたのかというと、基本的には何も変わっていないのではないか、と感じている。「コト」をPRや営業のレイヤーで活用している企業はたくさんあると思うが、見積明細や決算書というフォーマットで見ると、売上を構成するのは「モノ」となっている。トヨタ自動車がいくらカフェをつくったとしても、そこは自動車を買っていただくためのPRであり、広告活動だ。そうではなく、本気でモノ売りを辞め、コト売りに転じることができたケースはあまり聞かない。

先ほど、中国のウェブ制作会社から売り込みのメールが届いた。
一部をそのまま紹介する。

ウェーブページ コーディング 500円/p~
2014年から、弊社のコーディングが全面レベルアップを実施しました。
HTML5+CSS3+Responsiveで対応させて頂きます。

弊社は、日本向けウェーブページコーディング業務しており、専門の コーディングチームを持ち、今までに3000サイトのコーディング実績がございます。

ウェーブページのコーディングが、1ページあたり500円ということのようだ。
私が10年前に請けていたコーディング業務は1ページ最低でも5000円ほどの見積をしていたので、10分の1の価格ということになる。売り込みメールからでは品質の良し悪しは分からないのだが、一度お試しで無料対応するということも書かれていた。

ウェブ業界ももはや新しくはない。いわゆるページ単価、制作料という「モノ」価格はこれからも崩壊の一途をたどるだろう。だから、その上位レイヤーにある「コト」で価値交換をしていく必要があるのだが、どうもモノに価格をつけてきた商習慣は、様々な業界で簡単には変わらない。そこをやりきれるかどうか、それは小さい規模でチャレンジができる中小企業の方が有利だと思っている。

そして、原資となる商品・サービスを外からの視点で切り取り、価値の再定義をできるかどうかが、デザイナーやクリエーターのこれからの大きな役割になっていくだろうとも感じている。

2018-05-14 | Posted in 散文のようなものComments Closed 

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