a letter from kamoi-horbar

私は横浜で生まれ育ったので、隣町の横須賀には住んだことがないのだけど、両親ともに横須賀市出身で、従兄弟たちはいまも横須賀に住んでいる。住んだことはないが、ルーツというまではいかずとも、無意識的な意識のある場所。

だからというわけではないのだけど、昨年から横須賀市の鴨居という小さな港町に小さな部屋を借りた。まだ何をどうしようということもないのだが、何かを考える、何かを書く、何かを描く、何かを創るということにおいて、自分の存在がゼロになれる場所がほしかった。そのためには海が見える部屋でなくてはならない。少しいろんなことが貼りついている今の状況からのささやかな逃避と家族の理解が得られるギリギリのポイントを探った(笑)。

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横浜にも鴨居という場所があるのでよく間違われるのだが、この横須賀市鴨居という場所は、読みの通り、鴨が居着く場所というのが地名の由来らしい。昨年の夏に部屋を借りてから密かに楽しみにしていたところ、秋から冬にかけて本当に鴨がやってきた。黒くて小さな渡り鳥たちが、静かな港にやってきて、数ヶ月ゆっくりと羽を休めている姿を見て、自分の中から余計なものが少しだけ剥がれていくように感じられた。

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本当に静かな港。風が強い日でも、奥まった湾の地形からか、波は立たず、夜になれば空気もしまってしんと静まり返る。無音の世界。その無音の海に、大きなタンカーや豪華客船が、ゆっくりと行き交う。商業の営みを遠くに眺めながら、自分と現実世界との距離をたしかめている。

元号が変わるこの年のゴールデンウィークは、外国の豪華客船が4艘も東京湾に停泊しているとのこと。静まり返った夜にふと窓に目を向けると、ひときわ不自然なまでに明るいネオンを放った大型船が浮かんでいた。

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2019-04-30 | Posted in 散文のようなものComments Closed 

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